タップできる【目次】
ワンタン麺は いつ、どこから?
香港のご当地グルメのひとつ雲吞麺はいつ、どういうふうに生まれたのでしょうか?
「ワンタン麺」は清の末期に広東省広州市で生まれました。広東では「雲吞」と書きますが中国北部では「餛飩」と書きます。
昔は冬至になるとそれぞれの家庭で「餛飩」を包んで家族そろって食べる習慣がありました。
そして宋の時代になって「餛飩」の屋台が登場し、夜になると住宅地の近くで木棒を叩いて客呼びをしていたそうです。
時代が変わると麺やお粥なども加わって店舗で商売をするようになり、さらに数十年が過ぎた清末期に広州市西門で元祖「雲吞麺」が生まれました。
その雲吞麺が香港にできたのは中国の内戦が始まった1945年以降です。広州から人民がたくさん香港に逃亡してきました。そして人口が急に増えて飲食業が盛んになって来た頃、広州から来た雲吞麺の職人が麵屋を開業したのが始まりです。
広州の雲吞は肉や野菜で作っていたのですが海鮮に恵まれている香港では具に海老を加えたり、スープにも魚介を使ったりして今の香港雲吞麺に進化してきました。
日本のワンタン麺
余談ですが私と同じ年代の人が「ワンタン麺」と聞いてまず頭に浮かぶのはエースコックのワンタン麺じゃないでしょうか? 子供の頃よく食べたのを覚えています。
日本の中華レストランのワンタン麺は醤油か塩ラーメンにワンタンを乗せたものが多いです。日本のラーメンは北京拉麵を進化させたものなので、もしトッピングが海老ワンタンであれば北京ラーメンと広東ワンタンを合わせてたことになります。
北京や中国北部では焼き餃子と水餃子が主流で拉麺と一緒に食べることは少なく別物です。 なので日本のワンタン麺は日本独特のものと言えます。
そして香港のワンタン麺との違いは麺は一目瞭然で香港の方がかなり細く、スープも香港の方が薄目です。
香港の麺とスープの特徴
麺の種類
麺(ミン) | 小麦粉と卵で作った細麺で一般に言う幼麺(ヤウミン) |
---|---|
粗麺(チョウミン) | 小麦粉と卵で作った太麺 |
河粉(ホーファン) | 米粉から作ったきしめんのように幅の広い麺 ベトナムのホーと同類 |
米粉(マイファン) | 米粉から作った細い麺/ ビーフン |
伊麺(イーミン) | 卵と小麦粉だけで作った麺を湯がいてから揚げて固めたもの伊府麵の略 |
スープの特徴
豚げんこつ骨、豚の皮、鶏又はカモの頭、首、足、エビの頭、干しエビ、生姜でスープを作るのが一般的です。
干し貝柱や金華火腿(キンカハム)、乾燥大地魚(乾燥ヒラメ)、羅漢果(乾燥ラカンカ)など加えている店もあります。
麺と一緒に食べる「油菜」(ヤウチョイ)
雲吞麺店では麺と一緒に油とオイスターソースをかけた茹で野菜を食べるのが定番です。
- 西生菜(サイサンチョイ)レタス
- 菜心(チョイサム)菜の花系
- 芥蘭(ガイラン)からし菜
- 通心菜(トンサムチョイ)空心菜
- 唐生菜(トンサンチョイ)中国レタス
おすすめ店の紹介
劉森記麵家 (福榮街)
「劉森記」は2012年に初めてミシュランの推薦店になってから今年で8回目になります。コロナの影響で売り上げが3・4割減っていますが、スタッフ全員の雇用を保証しながら劉家の伝統技術を少しでも多くの人に知ってもらおうと頑張っている老舗です。
今は三代目の劉發昌氏が後を継いでいます。彼の父、劉森記は1940年頃お爺さんについて麺屋の露店を手伝っていたのですが戦後の1945年にひとりで香港に渡りました。
最初はオジサンの屋台を手伝だって1954年に深水涉に店を移しました。その後1993年に正式に店舗営業を始めて、深水涉にきてから67年たった今は店が3店舗に増えて去年4店目の劉燊記麵家(ラウサンケイ)を姉妹店としてオープンしました。
麺
「劉森記」の「竹昇麵」は小麦粉は香りのいいカナダ産、中国湖南省のカモの卵そしてかん水でつくります。2メートルの太い竹にまたがって手この作用で麺生地を押さえつけていきます。生地ひと玉を800から1000回押した後機械で薄く均等に伸ばして切ります。
この自家製麺は細いのに腰がしっかりした歯ごたえのある美味しい麺です。
近い将来に麺の製造過程をお客さんからも見れるように店舗を改装するそうです。今度あなたが行くときには見学できるかもしれませんよ。
スープ
「劉森記」スープは大地魚(乾燥ヒラメ)、蝦米(干しエビ)、豬骨(豚骨)和羅漢果(ロカンコ)などでとった少し色が濃い目のスープです。魚とエビと豚骨のバランスが良くて羅漢果の甘味が微妙に効いています。
参考記事:Michelin Guide Digital-Hong Kong Macau
おすすめメニュー
- 雲吞麺 (ワンタンメン) 初代からの秘伝のワンタン
- 淨水餃(チェンソイガウ) 雲吞にキクラゲや竹の子など野菜を加えた餃子
- 蝦籽薑蔥黑柏葉撈麵(ハーチーギョンチョンハッパイプローミン) 時間をかけて下処理した牛センマイに葱と生姜の千切りを混ぜてシャキシャキ!エビの外子を乾燥させた蝦籽も香ばしくて最高
店の基本情報
住所 | 深水埗褔榮街80號地舖 |
---|---|
Address | G/F, 80 Fuk Wing Street, Sham Shui Po |
電話番号 | 23863583 |
営業時間 | 12:30 – 22:00 |
目安予算と支払方法 | 500-1000円 支払:現金のみ |
好到底麵家 (元朗)
「好到底」は2011年から毎年ミシュラン推薦店に選らばれている70年以上の歴史をもつ老舗です。 1946年から屋台をはじめ1961年に今の店舗を買い入れて営業しています。
今のご主人は3代目の陳仕傑氏(Max)で毎朝6時からスープの仕込みを始め、ジャージャー麺の具と牛すじを作ります。
そのあとはワンタンと水餃を包むなどなど10時に店を開けるまで手が止まりません。そして夜8時に店を閉めるまで大忙しです。 休暇も正月の数日だけで一年中働きづくめです。
看板メニューのワンタンは昔ながらの一口サイズで豚肉は脂身を3割混ぜてエビは一本そのまま入れて作ります。 燕皮水餃は豚のミンチにネギとエビをこれも小さめに包みます。
コロナ前はワンタンは平日で4000個、休日は多いと7000個売っていました
麺
「好到底」の麺はもちろん自家製です。 タイの卵とカナダの小麦粉を使い、毎日温度と湿度によってかん水の量を調節します。 歯ごたえの良い細麺です。
スープ
「好到底」のスープは豚骨、蝦籽(エビの外子)と大地魚乾(乾燥ヒラメ)で毎日作ります。 飲んでも喉がかわかないあっさりしたスープです。
おすすめメニュー
- 雲吞麺 (ワンタンメン)エビが丸々一個入った食べやすいサイズの雲吞です。
- 燕皮水餃(インペイソイガウ)小ぶりでつるっと食べれるあっさり目の水餃
- 京都炸醬麵(ハーチーギョンチョンハッパイプローミン)細目に切った豚肉と辛みそソースを炒めた甘辛い餡と一緒に食べる麺
店の基本情報
住所 | 元朗阜財街67號地舖 |
---|---|
Address | G/F, 67, Fau Tsoi Street, Yuen Long |
電話番号 | 24762495 |
営業時間 | 10:00 – 20:00 |
目安予算と支払方法 | 500-1000円 支払:現金のみ |
麥文記麵家
[麥文記]は広州のワンタン大王麥煥池氏が100年前に創立した池記(チーケイ)の一派で1945年から佐敦で屋台を始め1958年に白加士街の今の店舗で開業しました。そして支店をださないで今までこの店だけに専念してきました。。
今年で4年連続でミシュラン推薦店に選ばれた創業60年以上の老舗です。
開業してからずっと麥民敬と妻の麥孔笑荷が二人で力を合わせて経営していたのですが60年代に麥民敬氏が急死してからは奥さんの麥孔笑荷さんがひとりで店を切り盛りしていました。
そして2003年に奥さんも亡くなってからは娘の麥心睿さんが二代目として引き継いで店を守っています。
[麥文記]は自社工場があり麺、スープ、ワンタン、水餃、豬手(豚足)、牛腩(牛すじ)、炸醬などすべて工場で製造しています。いつ食べても同じ味なので一日中地元の常連客でいっぱいです。
腰がある細麺はかん水の臭いもなく色もあざやかで、薄い皮でエビを丸ごと包んだワンタンは大きさもちょうど良く店の看板メニューです。
コロナ前は全部の麺メニューを合わせると毎日900から1000人前売っていました。
麺
[麥文記]の麺は職人が自分で生地を練り上げて機械で切ります。かん水を加えるタイミングと茹でるときのお湯の温度が大切で麺の腰の良くする重要ポイントです。
スープ
[麥文記]のスープは豚骨、大地魚(乾燥ヒラメ)と羅漢果(ロカンコ)から作ります。 サッパリ目で麺と具を引き立て役をうまくこなしています。
おすすめメニュー
- 鮮蝦雲吞麺 (ワンタンメン) ひと口サイズでエビが丸々入ってプリップリ
- 柱侯牛腩麵(チュウハウガウラムミン)牛すじと筋肉を柔らかくて煮込んだガッツリ食べれる麺
- 姜蔥撈麵(ギョンチョンローミン)しょうがとネギの千切りにごま油を混ぜて麺と一緒に食べるメニュー ワンタンを単品でもらって一緒に食べるといいですよ!
この佐敦白加士街〈ジョードンパッカーシガイ)は麵屋、スイーツ店、茶餐店などいろんな飲食店が集まっています。まずはこの通りを歩いてみてください。
店の基本情報
住所 | 佐敦白加士街51號地下 |
---|---|
Address | G/F, 51 Parkes Street, Jordan |
電話番号 | 27365561 |
営業時間 | 12:00 – 00:30 |
目安予算と支払方法 | 500-1000円 支払:現金のみ |
他に香港ワンタン麺のミシュラン推薦店は?
他にも香港でワンタン麺中心のミシュラン推薦店は7店あります。 食べ歩きが得意な方はぜひ全店制覇に挑戦してみて下さい!!!
- 英記麵家 西環西營盤高街32號地下 電話:25407950
- 好旺角粥麵專家 旺角洗衣街123號地下 電話:23939036
- 坤記竹昇麵 長沙灣永隆街1E號地舖 電話:34849126
- 正斗粥麵專家 中環國際金融中心3樓3016號舖 電話:22950101
- 沾仔記 中環威靈頓街98號地舖 電話:28506471
- 靠得住 灣仔克街7號地下 電話:28823268
- 粥麵館 鰂魚涌英皇道683號嘉里中心2樓 電話:27500208
香港ワンタン麺のまとめ
香港ワンタン麺は戦後広州から伝わってきてからも麺とスープそしてワンタンの伝統技を代々の職人さんが引き継いで試行錯誤しながら進化させてきました。
そして昔も今も安くて美味しい、香港を代表するB級グルメとして世界中の人に愛されているといっても過言ではないと思います。
コロナが収まったら香港に行こうと思っている皆さんに是非香港ワンタン麺のルーツと特徴を少しでも知ってもらいたくてこの記事を書きました。
私は香港に来てちょうど40年になる料理人です。香港を知り尽くしているわけではありませんが現地グルメの情報をこれからも書き続けていきます。
どうぞよろしくお願いします!!!