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本場香港の飲茶のルーツ
「飲茶」は広東省広州の代表的な食文化
中国では「食在廣州」(食は広州にあり)と言われてきました。
それはどうしてか?
アヘン戦争が終わった1840年代、広州は外国貿易の権利を一手に受け持ち大きく発展しました。
すると当然ながら海外からの食材もいろいろ集まり広州に行けば何でも食べれるという事で「食在廣州」と言われたのです。
昔は「茶寮」「茶館」「茶居」「茶楼」の4種類ありました
その昔お茶を飲むところは客層によって4段階に分かれていました。
- 「茶寮」(チャーリョン) 肉体労働者がお茶を飲んで休憩する場所
- 「茶館」(チャークン) 港や市場の労働者達の食事と交流の食堂みたいな場所
- 「茶居」(チャーコイ) 中流階級の商人やお金持ちがお茶と茶菓子を楽しむ場所
- 「茶楼」(チャーラウ) 政府の官僚たちが宴会をする高級レストランのような場所
それが1911~12年の辛亥革命で官僚たちの宴会がなくなり「茶楼」はダンダンおとろえていきました。
でもその反面「茶館」「茶居」はドンドン繁盛して、今の広東式「茶楼」に進化して香港にもその食文化が伝わってきたのです。
そして香港では飲茶をするときは「上茶樓」(ショォンチャーラウ)や「上酒樓」(ショォンチャウラウ)と言ってました。
後に「去飲茶」(ホイヤムチャー)「飲茶に行く」という意味になり、いつからか「レストランで点心を食べること」を「飲茶」(ヤムチャー)と呼ぶようになったのです。
我々が喫茶店でコーヒーを片手に新聞を読むように、香港では特にお年寄りが朝早くから飲茶しながら新聞を読む習慣が今も続いています。
今では朝の飲茶はお年寄りのいこいの場所で若い人たちはほとんど見かけません。みんなスタバに行ってますね。(笑)
飲茶を楽しむために、席に着いてからの流れとマナー!
1.お茶を選ぶ
レストランで席に着くとまず「お茶は何にしますか?」と聞かれます。前もってどのお茶を頼むか決めておきましょう。
主なお茶の名前
私はいつも鐵觀音がですが、すっきりしたお茶が飲みたい時は龍井か香片、たまに知ったかぶりして菊普(クッボウ)とか言ってボウレイ茶に菊茶を混ぜてもらいます。
- 普洱(ボウレイ)雲南省産が有名な黒茶です。円盤型ですごく高価なお茶もあります。
- 烏龍(ウーロン)福建省産が有名な青茶です。日本でもすでに有名ですね。
- 龍井(ロンチェーン)杭州市西湖区産が有名な緑茶です。日本人向けの飲みやすいお茶。
- 鐵觀音(ティックンニャム)福建省産が有名な青茶です。お茶の苦みがおいしいお茶。
- 香片(ヒョンピン)福州と蘇州産が有名な花茶です。日本でいうジャスミン茶。
- 菊花(クッファー)湖北、浙江産が有名な花茶です。菊の花の香りのいいお茶。
2.茶碗や箸を洗う
テーブルに用意されている食器は清潔とは言えないので、現地でもほとんど人がお湯かお茶で軽く洗ってから使います。
レストランによってはテーブルに空の大きいお椀が置いてあります。これは洗った後のお湯を捨てるため使います。
高級店でこれをすると逆に失礼になるので、もし食器が汚れていたら遠慮せずに交換してもらいましょう。
3.注文の仕方
ホテルなどの高級店は別ですがほとんどの店は点心のメニュー表があるので食べたいものに✔を入れてスタッフに渡してください。
2個以上頼みたいときは数を書くだけで大丈夫えです。
メニューには「小點」「中點」「大點」「特點」「頂點と安い順に分けてあります。 それぞれの値段も書いてあるので参考にして注文してください。
点心車がある店は下の写真のようなテーブル番号と人数を書いた点心カードを用意してくれます。 そのカードを持って食べたい点心がある車を探してください。
見つけたら売り子のおばさんに「○○○」と点心の名前を言うか指をさしてからカードを渡してください。
そしてハンコを押してもらって点心を受け取ります。 数が多い時はテーブルまで持ってきてくれますよ。
点心車が自分たちの席まで来るのを待っていたら食べたいものが無くなっていることがよくあります。
4.会計の仕方
食べ終わって会計をするときは手をあげてスタッフに「埋単」(マイタン)と言ってください。
スタッフが遠くにいるときは、ペンを持っているように指を3本合わせて手を高くあげ2・3回振ってみてください。(空中にサインをする感じです)声を出さなくてもわかってもらえますよ。
1.「茶位費」とか「茶水費」という名目で人数分が伝票についています。これは店によって値段が違いますが人数分のお茶代なので覚えておいてください。
2.会計の伝票が来たら内容と数が間違っていないか確認してください。ホントにたまにですが食べてないものが入っていたり数が間違っていることがあるので気をつけましょう。
点心車を使っているレストランは点心を取ったらこの写真のように伝票にハンコを押していきます。この場合もハンコの数が合っているか確認してください。
5.チップはどれだけ払えばいいの?
最後に気になるチップですが10%のサービスチャージが含まれているので、特に多めに払う必要はありません。
一般的に5~10ドル未満のコインはそのままチップとして残しておきますが、伝票を持ってキャッシャーで会計する店ではチップは必要ありません。
席に着いてからの流れの要点
- 席に着いたらまず飲むお茶を注文する。 前もって決めておきましょう。
- 食器を自分で洗う。必要に応じてですが洗った方が良いですね。
- 注文は点心のメニュー表があるのでそれに記入する。
- 会計をする時は必ず伝票の内容があっているか確認してください。
- 最後にチップは小銭だけで大丈夫です。
1.「ありがとう」を表すトントントン!
香港の中華レストランで食事をしていると時々片手で軽くテーブルを叩く人を見かけます。
これは他の人にお茶をついでもらったら時に「ありがとう」の感謝の気持ちを示ジェスチャーなのです。
正しいやり方は片手で親指を曲げて、人差し指と中指も軽く曲げます。そしてその3本の指で「トントントン」と軽くテーブルを3回叩きます。
ここでは詳しく語りませんが昔、お茶好きの乾隆帝がお忍びで訪れた茶館で自ら家来にお茶を注ぎました。
恐縮した家来が、乾隆帝の身分が周りにばれないように礼をする方法を考えました。そし家来の礼である「三跪九叩頭」(ひざまずいて地面に3回額を打ち付けて起立する動作を3回繰り返す)を手と指で表現したという説があります。
今でもお茶を継いでもらった時に食べ物で口がふさがっていたり、会話している時にはこの動作をします。
実際にこれをすると最初は違和感がありますが慣れてしまうとなかなか便利なので皆さんもやってみて下さい。
2.お茶の土瓶にお湯をたしてもらいたいときの合図
写真のように蓋を取っ手の方にずらして置いておけばお湯をたしてもらえます。
でも気が付いてくれない時もあるのでその時はスタッフに声をかけてください。
おもな点心メニューガイド
1.蝦餃(ハーカウ)
点心と言えばまず口に出るのがこの「蝦餃」です。プリプリの海老が満タンのエビ餃子!
2.鮮蝦燒賣(シンハーシュウマイ):
新鮮な豚肉と海老を包んでいるので日本のもっちりしたシューマイと違い歯ごたえがあって美味しいエビ焼売です。
3.魚翅餃(ユイチーカウ)
フカヒレ餃子と名乗ってますが一般的に春雨やフカヒレもどきを使っています。1980年以降に高級レストランで始めたメニューをマネた点心ですが、今ではおなじみの定番メニューになっています。
4.潮州粉粿(チュウチャウファンコー)
超薄力粉の生地でピーナッツ、干エビ、豚ミンチと野菜を包で蒸した潮州風餃子
5. 山竹牛肉(サンチョガウヨッ)
牛肉のミンチ肉にクワイとパクチーを混ぜた団子を蒸した物で下に湯葉をひいています。山竹は湯葉の別名です。パクチーが苦手な人は少し味見してから食べた方がいいですね。
ウスターソースをつけて食べます。
6. 小龍包(シュウロンパウ)
日本でもおなじみのショーロンポー。中のスープがすごく熱いので気を付けてください。
7. 咸水角(ハムソイコー)
韮,椎茸、干しエビと豚ミンチを糯粉の生地で包んで素揚げしたものです。チョットもっちりしていて見た目はあんこでも入っていそうですが具は甘くなく塩味です。
8.豆豉蒸排骨(タウシーチェンパイクワァ)
豚のバラ骨の部分を豆豉味噌で味付けして蒸した物です。家庭でもよく作る料理です。
9.豉汁蒸鳳爪(シーチャプチェンホンジャウ)
鶏足の指(もみじ)を醬油で少し+甘辛く味付けして柔らかく蒸した、点心を代表する一品です。
日本人は見ただけで「ダメだ!」という人が多いですが是非食べてみてください。骨を口から取り出すのがチョット面倒だけど皮が柔らかくてとてもおいしいです。
10. 綿花雞(ミンファーカイ)
魚の胃袋と鶏肉の蒸し物。乾燥の魚の胃袋を戻した「魚肚」(ユイトウ)は柔らかくてしっかり鶏の味がしみこんでいます。
11. 南乳炆豬手(ラムニュウマンチュウサウ)
南乳豆腐のタレで煮込んだ豚足です。 豚足の皮が柔らかくなるまで煮込んでいます。
12. 魚翅灌湯餃(ユイチークントーンガウ)
日本人好みの薄目でコクのあるフカヒレ入りスープ餃子です。
13. 炸春卷(ジャーチョンキュン)
揚げ春巻は野菜が多めで皮が香ばしくパリパリです。 ウスターソースをつけて食べます。
14. 香煎蘿蔔糕(ヒョンシンローパッコー)
香港の正月に無くてはならない焼き大根ケーキです。千切り大根と干しエビ、椎茸、中華ソーセージをもち粉、コンスターチと水を混ぜ合わせて型に入れて蒸します。そしてそれを切り分けてフライパンで焼きます。
15.咖喱土魷(カーレードーヤウ)
イカのカレー風味蒸しはするめ(乾燥)をかん水で柔らかくなるまで戻したり下処理にすごく時間をかけています。 そして最後にカレーソースをまぶして蒸しています。
1950年以降フィッシュボールと一緒に屋台で売られるようになったストリートフードです。
16.腸粉(チョーンファン)
水溶き米粉を蒸して作った生地にエビやチャーシューを巻いています。見た目が豚の腸に似ていることから「腸粉」と呼ばれています。
写真は「蝦腸」(ハーチョーン)エビの腸粉です。
17.糯米雞(ローマイカイ)
鶏の醤油煮込みともち米をハスの葉で包んで蒸した物で、ミニサイズは珍珠雞(チャンチューカイ)と言います。
18. 叉燒包(チャーシュウパウ)
オイスターソースで甘く煮たチャーシューを中華パンの生地で包んで蒸したホクホクのパンです。
19. 菠蘿叉燒包(ポーロチャーシュウパウ)
チャーシュー入りで小さめのパイナップルパンです。 パンの表面がサクサクで中から美味しいチャーシューが出てきます。
20. 奶黃包(ライウォンパウ)
カスタードクリーム入り中華パン。デザート感覚です。
21. 燕窩蛋撻(インウォータンタッ)
燕の巣を乗せた贅沢なエッグタルト。 熱々を食べると最高です。
22. 芒果布丁(モンゴーポーティン)
マンゴは香港の産物ではないのになぜか香港を代表するデザートのマンゴプリン。
一般的にスキンクリームをかけて食べます。
23.紅豆沙(ホンタウサー)
香港の中華レストランで定番デザートの香港風おしるこです。 みかんの皮を干した「陳皮」の香りがきいています。
24.豆沙煎堆(タウサーチントイ)
こし餡入りのもち粉団子に白胡麻をまぶして揚げたデザートです。 他にも黒ごまやカスタードなど中の餡が違うものもあります。
25. 馬來糕(マーライコー)
「馬拉糕」とも書きます。 馬來はマレーシアを意味してもともとはマレーシアのココナッツミルクを使ったケーキでした。
卵と牛乳を使って香港風にアレンジした蒸しパンのようなケーキです。
点心メニューリスト
- 蝦餃 (ハーカウ):海老の蒸し餃子
- 鮮蝦燒賣(シンハーシュウマイ):海老入りシュウマイ
- 魚翅餃(ユイチーカウ):フカヒレ蒸し餃子
- 潮州粉粿(チュウチャウファンコー):ピーナッツ入り潮州風餃子
- 山竹牛肉(サンチョガウヨッ):蒸し牛肉団子
- 小龍包(シュウロンパウ):ショーロンポー
- 家鄉鹹水角(ガーヒョォンハムソイコー):もっちり団子の素揚げ
- 豆豉蒸排骨(タウシーチェンパイクワァ); 骨付き豚バラの黒豆蒸し
- 豉汁蒸鳳爪(シーチャプチェンホンジャウ):鶏モミジの甘辛醤油蒸し
- 魚肚綿花雞(ユイトウミンファーカイ):魚の胃袋と鶏肉の蒸し物
- 南乳炆豬手(ラムニュウマンチュウサウ):柔らかく煮込んだ豚足
- 魚翅灌湯餃(ユイチークントーンガウ):フカヒレ入りスープ餃子
- 炸春卷(ジャーチョンキュン):揚げ春巻
- 香煎蘿蔔糕(ヒョンシンローパッコー):焼き大根ケーキ(パンフライ)
- 咖喱土魷(カーレードーヤウ):イカのカレー風味蒸し
- 蒸腸粉(チェンチョンファン):水溶き米粉を蒸して作った巻物
- 糯米雞(ローマイカイ):鶏肉ともち米をハスの葉で包んで蒸した物
- 叉燒包(チャーシュウパウ):チャーシューが入った蒸したパン
- 菠蘿叉燒包(ポーロチャーシュウパウ):チャーシューパイナップルパン
- 奶黃包(ライウォンパウ):カスタードクリーム入り蒸しパン
- 燕窩蛋撻(インウォータンタッ):燕の巣を乗せた贅沢なエッグタルト
- 芒果布丁(モンゴーポーティン):マンゴプリン
- 紅豆沙(ホンタウサー):香港風おしるこ
- 煎堆(チントイ):こし餡入りのもち粉団子を白胡麻をまぶして揚げています
- 馬來糕(マーライコー):ココナッツミルクを使った蒸しケーキ
本場の点心を楽しむためのまとめ
40年前に私が香港に来た頃は朝と午後のティータイムの飲茶は若い人からお年寄りまで幅広い年代の人たちでいっぱいでした。
でも今は時代が変わってしまい、若者だけで飲茶をしているのをあまり見かけなくなりました。
日曜祭日は家族連れでにぎわいますが、平日の朝はお年寄りのいこいの場となっています。
さてそんな「飲茶」ですが観光客にとっては香港に来たら必ず食べたい筆頭のご当地グルメです。
今さら「飲茶」のことを書いても皆さんお分かりかも知れませんが、この次香港に旅行するときに少しでもお役に立てると幸いです。
みんなで本場香港の飲茶を思う存分楽しみましょう!!!