香港にも一世代前までは屋台の食文化があり、多種多様の露天屋台で賑わっていた時代がありました。
この記事ではそんな今でも庶民がこと無く愛する「香港のストリートフード」をご紹介します。
人気店やお勧め店は種類が多いので別記事でそれぞれご紹介させていただきます。
タップできる【目次】
香港ストリートフードのルーツ
それではまずはストリートフードの歴史を簡単に解説いたします。
香港は海に囲まれ水産物が豊富なので、19世紀の初めまでは海鮮料理の水上レストランが屋台料理の代表的存在でした。
そして1950~60年代になると中国本土からの移民者が増え、生計を立てるために露天の屋台で食べ物、衣料品や玩具などを販売する路上商人が多く出回りました。
特に多種多様な安くて美味しいストリートフードは日々忙しく働く下層階級市民の食生活に無くてわならない存在となりました。
ところが70年代に入って衛生と健康上の問題が取り上げられてくると政府の監視が厳しくなり露天屋台は徐々に少なくなっていきました。
そして商売を維持するために人通りの多い繁華街や駅前で小型店舗の営業を始め、今のストリートフード店(街頭小食堂)が誕生しました。
とは言っても極少しですが今でも路上で移動型の屋台販売を見かけることもあります。
ストリートフードの種類
魚蛋(ユイタン) フィッシュボール
香港の「魚蛋」は主に「咖喱魚蛋(カーレーユイタン)」というカレー味やサテー味のスープで煮込んだフィッシュボールを竹串に刺したり、紙コップに入れて販売しています。
そしてそれぞれ辛さを加えたものと加えてない物があり、好みで選択できます。
一串(6個)が8~10HKドル(117~147円)で売られています。
このフィッシュボールは香港中のいたる所で販売されていて、子供から大人まで多くの人に人気のストリートフードです。
2002年8月8日の今はローカル新聞「アップルデイリー」には、当時”香港の人々は毎日55トン(375万個)のフィッシュボールを食べている”と記載されていたのを見てもその人気度は半端ではありませんね。
臭豆腐(チャウタウフー) 日本語も同じ「臭豆腐」
「臭豆腐」は浙江省紹興市の伝統的なおやつで、上海のいたるところに見られ、上海の人々のお気に入りの食べ物です。
1950年代に香港が陥落した後、中国本土から多くの難民が香港と台湾に集まり、その多くが上海から脱出したため、この上海の伝統スナックが香港に伝わりました。もちろん台湾でも好んで食べられています。
臭豆腐は豆腐の発酵食品でなので、発酵後の独特の鼻につく様な臭いがすることから「臭豆腐」と呼ばれています。
伝説にすぎませんが生豆腐が臭豆腐になる起源を紹介します。
清朝の光緒時代、安徽省西元郡の裁判官を目指す王志河は試験を受けるために北京に行きました。しかし試験に失敗し彼の家業の豆腐屋を手伝うことに決め帰省しました。
ある日豆腐を作りすぎて売れ残ったので発酵させて腐乳を作るつもりで小さく切った豆腐に塩と唐辛子の粉をふりかけて封をした後しばらく放置しておきました。
すると豆腐は青くなりとても臭い匂いがするのですが、噛んでみるとすごくまろやかな味わいになっていました。
そして彼はこの発酵した豆腐を臭豆腐乳として商品化することしたという説があります。
香港ではもうあまり見かけなくなった「臭豆腐」ですが、街を歩いていて何か不思議な臭い匂いがしたら周りを探してみてください。
価格は場所と大きさによりますが1個8~12HKドル(117~176円)です。
牛雜(ガウジャプ) 牛モツ煮込み
牛バラ肉、牛の胃袋、牛の心臓、牛の肝臓、牛の腎臓、牛の肺などを柱侯醬(チューホウソース)で柔らかくなるまで煮込みます。 大根を一緒に煮込むのが定番になっています。
「柱侯醬」(チューホウソース)は中国佛山の特産品で、大豆、ニンニク、生姜、塩、砂糖、ごま、醤油から作られています。家庭でも肉や野菜の煮込み料理によく使われています。
上の画像は香港のスーパーでよく見かける柱侯醬(チューホウソース)です。一瓶20HKドル(300円)前後で購入できます。
ストリートフードのお店では竹串に刺したり紙コップに入れて提供しています。チリオイルやチリソースが必ず用意されているのでお好みで加えてから召し上がってください。
- 一串 10~13HKドル(117~190円)
- 小盛(カップ) 30HKドル(440円)
- 大盛(カップ) 50HKドル(734円)
本来は胡椒や八角など五種類以上の香味料を使った煮汁で、じっくりと牛モツが柔らかくなるまで、数時間煮込みます。
又、牛の内臓なので汚れや臭みを除くために調理前の下処理がとても大変です。
朝食に人気のストリートフード
炒麵(チャウミン)焼きそば
細麵ともやしとキャベツやネギだけのシンプルな醤油焼そばを油紙で包んでビニール袋に入れて提供してくれます。 これもチリオイルやチリソースをつけて食べます。
最近は発泡スチロール容器で提供しています。
同じように塩味で炒めた炒米粉(チャウマイファン)焼きビーフンも人気があります。
両方とも一人前20HKドル(292円)前後です。
腸粉(チョォンファン)
「腸粉」は水溶き米粉を蒸して作った生地を巻いた物で、見た目が豚の腸に似ていることから「腸粉」と呼ばれています。 醤油、胡麻たれや甘味噌たれをつけて食べます。
つるっつるで柔らかくて朝食にもってこいのストリートフードです。
一人前15~20HKドル(220~292円)です。
魚肉燒賣(ユイヨッシューマイ)
ストリートフードのシューマイは魚のすり身(魚肉)と片栗粉から作ったもので飲茶の豚肉と海老で作ったシューマイとは別物です。
原料費を抑えるために片栗粉を多く使っているのでフィッシュボールよりも色白でシューマイの形をした粉団子みたいです。 醤油とチリオイルをつけて食べます。
子供や若者に人気のストリートフードでコンビニでも販売しています。
一個1HKドル前後で売られています。
港式滷味(ゴンセッローメイ) 鶏と豚モツの串刺し
今はあまり見かけなくなりましたが私が香港に来た当時、夜中によく食べたストリートフードです。
鶏の腸、脚、砂肝、肝、そして豚の耳と頭、肝、小腸、赤ソーセージなどを串に刺して売っています。
一串9~14HKドル(131~204円)です。
辛子(マスタード)、甘味噌、チリソースなどをつけて食べ、モツ類が好きな人はビールのつまみに最高です。
炸食品(ジャーセッパン) 揚げ物
炸大腸(ジャーダイチョォン)豚の大腸のから揚げ
「炸大腸」は豚の大腸を念入りに掃除して臭い消しの香味料などで下煮したものを乾かした後、表面がパリッとするまでゆっくりと揚げます。
油が切れたら竹串に刺しながら切り分けていきます。マスタード、甘味噌、梅サワーソースなどをお好みでつけて食べます。
制作過程で時間と手間がかかり大量の油で揚げるので、家で作るにはかなりハードルが高いストリートフードです。
一串15HKドル(220円)前後ですので、是非一度お試しください。
煎釀三寶(チンヨォンサンポウ) ピーマンとナスのすり身鋳込み
青ピーマン、ナス、豆腐にすり身を詰めて炒めたものを醬油とチリオイルを掛けて食べます。
淡水魚のすり身なので少し魚の臭みがありますがそこが香港らしくて私は気に入っています。
本来は鉄板で焼くのですが揚げ物メニューが多くて鉄板スペースがない店は、油で揚げて提供しています。
お店によって野菜の種類と大きさが違いますが3~5種類の盛り合わせが15~20HKドル(220~292円)で販売されています。
飲茶でも定番メニューになっていて、点心車のあるレストランでは鉄板の車で大根餅などと一緒に焼きながら店内を回っています。
炸魷魚鬚(ジャーヤウユイソウ) イカゲソのフライ
ヤリイカのゲソの揚げたもので、店によって粉だけで揚げた唐揚げ風や揚げ衣で揚げた天ぷら風があります。
一人前20~25HKドル(292~365円)です。
碗仔翅(ウンチャイチー) ふかひれスープ擬き
「碗仔翅」はキクラゲ、シイタケ、玉子、鶏の胸肉とフカヒレの代わりに春雨を入れて作った薄い醤油味でトロトロのあんかけスープです通常は赤酢と白コショウを加えていただきます。
特に寒い時期に人気の身体が温まるストリートフードです。一杯15HKドル(220円)。
お店によっては刻みレタスと棒状の魚のすり身を追加で提供しています。
雞蛋仔(カイタンチャイ) エッグ型ワッフル
「雞蛋仔」(カイタンチャイ)は今や香港だけではなく海外にも進出している有名なストリートフードです。
玉子、白砂糖、バター、小麦粉と無糖練乳を合わせた卵液を型に流し込み香ばしく焼き上げたエッグ型ワッフルと言えば分かりやすいと思います。
最近ではチョコレート、ソルティエッグ、抹茶、フルーツなどの具やフレーバーを加えた物も出来ています。街を歩きながら食べれるデザートです。
オリジナル味が13~18HKドル(190~263円)でその他のフレーバーは25~35HKドル(365~511円)で販売されています。
当然ながら若者に超人気のストリートフードです!
車仔麵(チェーチャイミン) 屋台麺
昔は木製の屋台が路上営業していたので「車仔麵」(チェーチャイミン)「小さな車の麺」と呼ばれています。
麺、トッピングとスープを自分で選ぶスタイルで、今ではスープも豚骨、麻辣、醤油味など数種類そろっています。
今は店舗営業の店がほとんどで日本のラーメン店に押されながらも根強い人気をキープしています。
値段はそれぞれの店と追加する具材によって変わってきます。
価格はトッピングを2種類選んで25~28HKドル(365~409円)、そこにトッピングを一種類追加するごとに5~6HKドル(73~88円)追加されます。
一般的にはトッピングを3~5種類選んで600円位になります。あまり安くはないですね。
トッピング
- 魚蛋 牛丸 墨魚丸 貢丸 フィッシュボール、牛団子、イカ団子、豚団子
- 豬紅 豬皮 豬大腸 豚の血、豚の皮、豚の大腸
- 牛柏葉 牛腩 牛センマイ、牛バラ、筋
- 雞中翼 鶏手羽
- 魷魚 イカ
- 燒賣 シュウマイ
- 蘿蔔 冬菇 蔬菜 大根、シイタケ、野菜
- 蟹柳 獅子狗 かにかま、竹輪
- 紅腸 芝士腸 煙肉 レッドソーセージ、チーズソーセージ、ベーコン
- 雲吞 餃子 ワンタン、餃子
麺
- 河粉 米粉 米線 フォー、ビーフン、雲南ライスヌードル
- 油麵 幼麵 粗麵 伊府麵 上海細麺、香港細麺、太麺、イーフー麺
- 烏冬 即食麵 うどん、インスタントラーメン
スープ
- 沙嗲(サテー) 東南アジア系のサテー味のスープ
- 咖喱(カレー) 香港カレー味スープ
- 牛腩(牛バラ) 牛バラを煮込んだ香味料風味のスープ
- 酸辣(ホットサワー) 上海の酸辣湯で有名なホットサワースープ
- 麻辣(マーラー) 四川の麻辣味、口がしびれるマーラースープ
- 清湯(上湯) 最もシンプルな清ましスープ
- 冬蔭功(トンヤムクン) タイのトンヤムクンスープ
焼き甘栗、焼き芋
毎年冬になると「天津甘栗」の屋台が登場します。栗を炒める香ばしい匂いが辺りを温かくします。
そして屋台の側に来ると香ばしい香りが漂い食欲をそそります。
通常焼き芋と焼きうずら玉子も一緒に提供していて、まさしく冬の風物食ですね。
焼栗と焼き芋は計り売りで、栗は450グラムが40HKドル(584円)で焼き芋は450グラムで20HKドル(292円)が相場です。
豆腐花、糖水
「豆腐花」はデザート系ストリートフードです。 滑らかでつるっつるで甘味抑え目の健康食品です。
ブラウンシュガーなどの蜜を柔らかめの豆腐に掛けて食べる感じですね。
やはり昔は移動式屋台で営業していましたが今は店舗営業がほとんどで専門店もあります。一般的にはお汁粉や胡麻汁粉などの糖水(トンソイ)を一緒に販売しているデザート店が多くなっています。
値段は様々でテイクアウトのみの小さな店舗では5~10HKドル(73~146円)。
店内営業のデザート店では15ドル(219円)前後です。ダイエット中の方でも気にせずに食べれるデザートです。
鮮搾果汁(シンジャーコーチャプ) フルーツジュース
フルーツをその場で絞ってくれる果汁100%のフルーツジュースです。
人気はやはりマンゴー、スイカ、グアバ、オレンジ、リンゴ、グレープフルーツなど一般的なフルーツの搾りたてジュースです。
サトウキビの搾りたてジュースも有名です。
場所によって少し差はありますが、果汁100%が一杯15~25HKドル(220~370円)で販売しています。
自分の好みでいくつかのフルーツをミックスしてもらっても良いですね。
前もって絞りペットボトルに詰めた物も販売していますが、それは買わずに目の前で絞ってもらいましょう。
雪糕車(シュッコウチェー) 車販売のソフトクリーム
ひと目でわかるアイスクリーム車を見つけると、思わず買ってしまうソフトクリーム。
今は一個12HKドル(175円)で販売しています。
昭和時代のソフトクリームを思い出す懐かしい味です。
まとめ
香港のストリートフードの屋台営業は政府によって厳しく規制され、今はほとんど見かけ無くなっています。
しかし屋台から店舗営業に転向し、進化しながら今でも街のあちらこちらで繁盛しています。
何時になっても我々一般庶民にとって、ストリートフードは懐に優しい日常食で、無くてはならない存在なんですね。
更には2016年には香港ミシュランに「ストリートフード」部門が新設され、認定された店も増えてきています。
この記事を読んでほんの一部でも香港の食文化を知っていただけたら幸いです。
次の記事では今回取り上げたストリートフードの種類ごとに人気店やお勧め店をご紹介させていただきます。